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2025.11.10

電気工事士を育てる会社へ! 中小企業の人材育成マネジメント完全ガイド

「新人がすぐ辞めるのはなぜ?」 「ベテランが忙しくて、新人を教えている余裕がない」

このように、中小の電気工事会社では、現場任せの人材育成に限界を感じる声が増えています。

本記事では、教育担当者の負担を減らしながらも、誰でも実践できる“育成の仕組み”を整える方法をやさしく解説します。

 

なぜ新人が定着しない? 現場任せの教育の限界とは

多くの電気工事会社が抱える「人が育たない」悩み。その背景には、現場任せの教育体制が根本的に機能していない現実があります。

まずは、若手が辞めてしまう現場の課題からひも解いていきましょう。

 

若手が辞める理由は?「教える人がいない」現実

「せっかく採用しても、3ヶ月もしないうちに辞めてしまう」

このような声は、全国の中小電気工事会社から数多く聞かれます。背景には、単なる「本人のスキル不足」ではなく、「教える側がいない」という深刻な構造的課題があります。

現場ではベテラン社員が慢性的に不足しており、日々の業務に追われて新人をフォローする余裕がありません。その結果、「聞けない」「見て覚えろ」「教わっていないのに怒られる」といった状況が繰り返され、若手は孤立し、やる気を失いがちです。

特に未経験で入社した若手ほど、自信をなくすのも早く、離職の検討につながってしまいます。若手のスキルや性格ではなく、「育てる力」が職場にないことが、新人の早期離職の大きな要因になっています。

 

OJTだけに頼ると、なぜ育成が回らなくなるのか

現場で新人を教育・育成するOJT(On the Job Training)は、実務を通じて仕事を覚えるには有効な手段です。

しかし、属人的に運用されているOJTには、次のようなリスクがあります。

・教える側の負担が過剰になる
・指導内容にバラつきが出る
・どこまで習得できているかが見えづらい
・忙しさによって教育が途中で止まってしまう

また、OJTには明確な「基準」や「型」がないケースが多く、会社としての教育の水準が保てず、「現場や人によって教え方が違う」という状態になりがちです。これでは、教える側も教えられる側も混乱し、結果的に“育たない文化”が根づいてしまうおそれがあります。

特に最近は、マニュアルや言語化された指導を求めるZ世代の若手も増えています。「現場を見て覚える」が通用しない時代だからこそ、OJT“だけ”ではない、新しい仕組みが求められています。

 

すぐに始められる「教えること一覧表」の作り方

新人教育を仕組み化しようとすると、「難しそう」「時間がない」という声をよく耳にします。

しかし、特別なツールや制度を整える前に、まずは今ある業務を“見える化”するだけでも、教育は格段にスムーズになります。ここでは、誰でも今日から始められる「教えること一覧表」の作り方を紹介します。

 

まずは書き出してみる:やることリスト化のすすめ

教育を仕組み化するといっても、やることはとてもシンプルです。まずは「新人にどんな作業を覚えてほしいか」を書き出してみましょう。

たとえば、「工具の名前を覚える」「コンセントの取り付け方を習得する」「脚立の使い方を理解する」といったように、日々の現場で必要な作業を思いつくままにリストアップしていきます。

最初から細かく分類したり、完璧なリストを目指す必要はありません。あとで追加・変更していけば十分です。大事なのは、「社内で共通の教育項目を持つこと」です。

 

できる・できないを○△×で整理するだけでOK

リストができたら、次は「今誰がどこまでできているか」を○△×などの記号でチェックしていきます。

たとえば以下のような基準を使えば、記録もカンタンです。
◎:他人に教えられるレベル
○:一人で問題なくできるレベル
△:補助があればできるレベル
×:未経験

これだけでも、どの社員が何を教えられるのか、新人がどこまで成長しているのかがひと目でわかるようになります。

このような一覧表は「スキルマップ」とも呼ばれていますが、要は「教えること」「できること」を見える形にしただけです。決して特別なものではなく、現場の手書きメモからでも始められます。

 

スキルマップのサンプル

たとえば、下記のような形にまとめると、誰がどの作業を教えられるか、どこを重点的に育てるべきかが一目瞭然になります。

作業内容 Aさん Bさん Cさん
工具の名称と使い方
コンセントの取付 ×
高所作業の注意点
分電盤の結線 ×

こうした表を定期的に更新していけば、社内の教育状況を“見える化”しながら改善していくことができます。

▼育成マニュアルについては、こちらの記事もご一読ください。


「電気工事士の新人教育を現場任せにしない!育成マニュアルの作り方【未経験定着・離職防止のコツ】」

 

「育成担当が疲れる」を防ぐ分担の工夫

「また新人は自分が教えるのか……」そんな声が現場で聞こえていませんか?

教育熱心な先輩ほど、育成の負担が偏って疲弊してしまうケースは少なくありません。ここでは、“教える人が疲れない”仕組みをつくるための分担と文化づくりの工夫を紹介します。

 

“一人に任せない”育成チームのつくり方

新人育成でよくあるのが、「○○さんが教える係」と役割が固定され、特定のベテラン社員に負担が集中するケースです。業務も忙しい中で指導を一手に担えば、どんなに意欲がある人でも疲れてしまいます。

そこで検討したいのが、育成を“チーム”で支える体制です。チーム制といっても、大がかりな制度を整える必要はありません。たとえば以下のような形でも十分機能します。

・業務ごとに指導者を分ける(例:安全管理はAさん、工具の使い方はBさん)
・曜日ごとに担当を分ける(例:月・水・金は先輩A、火・木は先輩Bがフォロー)
・1週間ごとに交代制で教えるローテーションを組む

このように負担を「見える形」で分担すれば、「あの人に任せればいいや」という無意識の丸投げも防げます。

また、「どの先輩がどの業務を教えられるか」を一覧表で共有しておけば、新人側も誰に何を聞けばよいか迷わずにすみ、双方にとってストレスが軽減されます。

 

先輩全員が“ちょっとだけ教える”文化をつくる

育成チームを機能させるうえで、もうひとつ重要なのが「文化づくり」です。

「新人に教えるのは一部の人だけ」「自分は関係ない」という空気がある職場では、どれだけ制度を整えても形だけになってしまいかねません。

理想は、先輩全員が“ちょっとだけ教える”当事者意識を持てる環境です。たとえば以下のような工夫を取り入れてみてください。

・「毎日5分だけ、誰かが声をかける」ルール
・月1回、全社員で「教えるネタ」を持ち寄るミーティング
・「この前教えた内容」など簡単に記録しておく“指導ノート”の共有

こうした小さなアクションを積み重ねることで、「育成はみんなで支えるもの」という意識が少しずつ職場に浸透していきます。

結果的に、特定の社員に負担が集中しなくなり、育成の継続性が高まるだけでなく、教える側の社員自身も“気づき”や“学び”を得る好循環が生まれます。

 

後輩を育てる文化を根づかせるアイデア

教育制度やチームを作っても、現場で使われなければ意味がありません。大切なのは「育てる文化」を職場に根づかせることです。

ここでは、制度を定着させ、日常業務の中に自然と教育が組み込まれるようになるための3つのアイデアを紹介します。

 

アイデア1:図で見る「育成フロー」で新人に安心してもらう

「育成フロー」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、実際は紙1枚に手書きで手渡す形でも構いません。

・入社1週目:工具の名前と使い方を覚える
・2〜3週目:先輩と一緒に配線作業の補助
・4週目以降:安全管理の基本を学ぶ

といった流れを、時系列で整理して矢印でつなぐだけでも「何を、いつ教えるか」が明確になります。

新人からも「今、自分は何を覚えればいいのか」が可視化され、先輩社員も「今日はここまで教えよう」と計画的に動けるようになります。

 

アイデア2:“動画マニュアル”で現場も新人もラクになる

「教えたいけど時間がない」という現場におすすめなのが、スマホ動画の活用です。

工具の使い方、配線作業の流れ、よくあるミスと注意点といった内容を1〜2分の短い動画にまとめるだけでも、新人の理解度は大きく変わります。

一度撮影しておけば何度でも繰り返し見てもらえるため、教える側の説明負担が軽くなり、指導の質も均一化できます。

編集ソフトを使わなくても、スマホで撮ってクラウド共有するだけで十分です。「この前の作業、動画で撮っておこうか」と、現場の中で自然にノウハウを残していけるようになると、“教える文化”が蓄積する環境が生まれます。

 

電気工事士の新人教育で研修や講習に使える助成金とは?

新人教育を強化したいけど、「外部の研修を受けさせるにはコストが…」とためらっていませんか?

実は、電気工事士の講習やOJTにかかる費用は、国の助成金で大きく補助される可能性があります。

ここでは、現場の研修にも使える「人材開発支援助成金」のしくみと活用事例を紹介します。

 

人材開発支援助成金のしくみ

人材開発支援助成金とは、企業が従業員に対して職業訓練を行った場合に、研修費用と賃金の一部を補助してくれる制度です。

厚生労働省が管轄しており、中小企業にとっては非常に手厚い支援内容になっています。ポイントは以下の通りです。

・対象企業:雇用保険に加入している中小企業(個人事業主も可)
・対象訓練:指定の職業訓練(社外研修・資格講座・OJT形式の訓練など)
・助成内容:研修費用(上限あり)+研修中に支払う賃金の一部

たとえば、第二種電気工事士の資格講座や、外部講師を招いた現場研修も条件次第で助成対象になります。

▼人材開発支援助成金について、詳しくはこちらの記事もご覧ください。

「電気工事士の資格取得に使える助成金・補助制度とは? 企業が活用すべきポイントを解説」

 

講習代+日当でここまで出る! 人材開発支援金の活用事例

実際に、人材開発支援金を電気工事士の育成に活用した事例(※)もあります。

ある中小電気工事会社(従業員10名)では、新卒採用した若手に第二種電気工事士資格を取得させるため、外部の研修講座を受講させました。

・受講講座:第二種電気工事士研修(外部訓練機関)
・講習費用:36,000円
・研修時間:18時間(OFF-JT)

これに対して、支給された助成金は次のとおりです。

項目 支給額
経費助成 16,200円(講習費の45%)
賃金助成 13,600円(時給760円×18h)
合計支給額 29,800円/人

受講料が36,000円だったにもかかわらず、29,800円が支給されたことで、会社の実質的な負担はわずか約6,200円に抑えられました。

このように、育成にあたってコスト面の課題を抱えている企業でも、助成金を使えば現実的に教育に投資できる可能性があります。

(※)出典:厚生労働省「人材開発支援助成金の活用事例」
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001078914.pdf

 

電気工事士の育成でよくある質問

ここでは、電気工事士の育成にまつわる質問について回答していきます。

 

Q1:教育体制ってそもそも必要?

「仕事は現場で覚えるもの」「手取り足取り教えなくても育つ」と考えている方も多いかもしれません。たしかに一昔前は、それでも現場が回っていたかもしれません。

しかし現在は、若手が育つ前に辞めてしまう時代です。本人任せの育成では、社内にノウハウが蓄積されず、「教える人が辞めたら終わり」という属人化のリスクも高まります。

教育体制をつくる目的は、「教えるため」だけでなく、教えやすい・育ちやすい環境を整えることです。

 

Q2:ベテランがいなくても育成できますか?

可能です。たとえば「1〜2年先輩」が「今の自分よりちょっと前のこと」を教えるだけでも、現場に安心感が生まれます。

また、動画マニュアルや簡易チェックリストがあれば、個人の知識や経験に頼らずに指導できます。育成の“ベース”さえあれば、誰でも「教える役割」を担えるようになります。

 

Q3:紙で十分?デジタルでも管理すべき?

はじめは紙でもまったく問題ありません。むしろ現場で手書きチェックできるような「一覧表」は導入しやすく、継続もしやすいです。

ただし、育成の進捗を複数人で把握する/複数拠点で共有するような場面では、Excelやスプレッドシートといったデジタル管理の方が便利です。

「紙+デジタルの併用」から始めるのもおすすめです。無理なく始めて、少しずつ運用を最適化していきましょう。

 

育てる仕組みづくりで、“辞めない会社”を目指しませんか?

人手不足が深刻化するいま、「採用して終わり」ではなく、「育てて定着させる」ことが、これまで以上に重要になっています。

新人教育の仕組みは、完璧である必要はありません。まずは、「やること一覧表(スキルマップ)」を作るだけでも、育成の第一歩になります。

さらに、国の助成金制度を活用すれば、講習や研修にもコストをかけずに取り組むことが可能です。

手間なく始められる工夫を取り入れ、教える人・教わる人の負担を減らしながら、「育てる会社」へと変わっていきましょう。

電工ナビでは、若手の離職に悩む企業様向けに、「Z世代電気工事士の採用・育成のポイント」をまとめた無料ホワイトペーパーをご用意しています。

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