2025.10.10
若手電気工事士が辞めない会社づくり【評価と成長支援の設計法】

「若手がすぐ辞めてしまう…」そんな悩みを抱える電気工事会社は少なくありません。給与や待遇だけではなく、評価制度の不透明さや成長の道筋が見えないことが離職の原因になることも。
では、どうすれば若手電気工事士が安心して働き続けられる環境をつくれるのでしょうか。
本記事では【評価】【成長支援】【職場環境】の3つの視点から、定着率を高める具体的な方法を解説します。
CONTENTS
なぜ若手電気工事士は辞めてしまうのか?
電気業界では「せっかく採用しても若手が続かない」という課題がよく聞かれます。厚生労働省の統計でも、建設業全体で若年層の早期離職率が高いことが指摘されています。
<出典> 厚労省|新規学卒就職者の離職状況
では、なぜ若手電気工事士は辞めてしまうのでしょうか。その理由を整理すると、大きく【一般的な離職要因】と【電気業界特有の課題】の2つに分けられます。以下で具体的に解説します。
若手離職の主な理由とは?
若手社員が辞めてしまう背景には、業界を問わず共通する要因が存在します。代表的なものは「給与や待遇への不満」「キャリアの見通しが立たない」「職場の人間関係や雰囲気」です。
特に入社後1〜3年以内の早期離職は多く見られ、将来像を描けないまま現場で忙殺されてしまうケースが少なくありません。
電気業界特有の課題は?
電気業界には、他の職種とは異なる特有の離職リスクがあります。
たとえば、屋外や高所での作業による体力的な負担、繁忙期の長時間労働、不規則な勤務体制などが代表的です。
また、多くの業務で資格が必要になるため、入社直後に「早く資格を取らなければ」というプレッシャーを感じやすい点も特徴です。これらが重なることで「続けられない」と感じる若手も少なくありません。
若手が定着する会社の「3つの鍵」
若手電気工事士を定着させるために「給与を上げよう」と検討する経営者の方も多いのではないでしょうか。
しかし、上に挙げた離職の要因を考えると、給与面の改善だけでは不十分と言えます。重要なのは【公平な評価制度】【成長を支える仕組み】【働きやすい現場環境】の3つの柱を整えることです。これらが揃えば、若手は将来のキャリアに安心感を持ち、長く働き続ける意欲を高められます。
①公平で納得感のある評価制度
評価が不透明な職場では「自分は正当に評価されていないのでは?」という不満が生じやすく、離職につながります。
こうした状況を改善するためには、スキルや資格、日々の業務姿勢を可視化し、公平に評価する仕組みが必要です。また、結果だけでなく「努力やプロセス」を評価する制度を設けることで、若手もやりがいを感じやすくなります。
②キャリアと資格取得の成長支援
電気工事士は資格とキャリアの積み重ねで収入や役割が大きく変わります。
そこで、会社が資格取得を支援する制度(受験費用補助・勉強時間の確保など)を整えれば、若手の成長意欲は高まります。さらに、キャリアパスを明確に示すことで「自分が3年後・5年後にどんな仕事をしているか」をイメージしやすくなり、定着率の向上につながります。
③働きやすい現場環境づくり
どれだけ評価や支援を整えても、現場が過酷すぎれば若手は続きません。
安全対策の徹底、最新工具の導入、残業削減への取り組みなど「働きやすい現場づくり」が重要です。また、相談しやすい職場の雰囲気や、先輩社員からのフォロー体制も、若手の安心感につながります。
評価制度の設計方法とは?
「頑張っているのに評価されない」「どんな基準で評価されているのかわからない」という状況は、若手がモチベーションを失う原因になります。
電気工事士の評価制度を設計する際には、透明性・納得感・成長実感の3つを意識することが重要です。以下では、効果的な評価の仕組みをつくるためのポイントを解説します。
「できること」を見える化する評価基準
若手の成長を実感させるためには、「何ができれば評価されるのか」を明確に示す必要があります。
たとえば「電動工具の安全使用」「図面の理解」「第二種電気工事士資格の取得」など、スキルや資格をステップごとにリスト化し、到達度を見える化するのが効果的です。
成果だけでなくプロセスを評価する仕組み
現場仕事では「工期内に終えたか」「ミスなく施工できたか」といった成果が注目されがちですが、若手の定着には「努力や学びの過程」を認める評価が欠かせません。
資格取得に向けた勉強姿勢、先輩からのアドバイスを活かそうとする行動、安全確認を徹底する姿勢など、日々の取り組みを評価に含めることで、若手は「見てもらえている」と実感できます。
成長支援の仕組みをどう作る?
若手電気工事士が「この会社で長く働こう」と思えるかどうかは、成長の道筋が見えるかも大きなポイントです。
資格取得のサポートや教育体制、現場で学べるOJT、そしてメンター制度といった仕組みが整えば、若手は将来像を描きやすくなり、定着率も高まります。
資格取得支援と教育制度の導入
電気工事士は、資格がキャリアアップや収入に直結する仕事です。会社が資格取得を支援することで「成長を後押ししてくれる職場」という信頼を得られます。
支援の方法としては、受験料や教材費の補助、資格取得奨励金、試験前の勉強会や社内研修などがあります。また、段階的な教育制度(新人研修→現場研修→資格サポート)を設けると、若手も安心して学べます。
OJTとメンター制度の活用法
現場でのOJT(On the Job Training)は、電気工事士の育成に不可欠です。先輩社員が実際の業務を通じて指導することで、知識だけでなく「安全意識」「現場判断力」も身につきます。
ただしOJTでは、担当する先輩社員次第で、教え方が大きく変わってしまうおそれがあります。そこで、上に挙げた評価制度と並行して、メンター制度を取り入れることもおすすめです。
メンター制度とは、OJT担当の先輩社員意外に「相談相手」としての先輩社員(=メンター)を設定し、業務内容はもちろん、メンタル面でも相談できる環境を作る仕組みです。このように若手が「孤立しない仕組み」を整えることが離職防止につながります。
職場環境改善の実践例
若手電気工事士が安心して働き続けられるかどうかは、「現場の環境」に大きく左右されます。具体的には、安全対策の徹底や作業効率の向上、そして風通しの良いコミュニケーション文化をつくることが、離職防止につながります。ここでは、働きやすい環境づくりの実践例を紹介します。
現場での安全・効率化への取り組み
電気工事現場は高所作業や重機使用など、リスクが高い場面が多く存在します。
そこで安全管理を徹底し、最新の工具やICT機器を導入することで、事故防止と効率化を両立できます。たとえば、ヘルメット着用の義務化、KY(危険予知)活動、タブレットでの図面共有などは代表的な取り組みです。
相談できる風通しの良い文化づくり
若手が離職する大きな要因の一つに「相談できない環境」があります。失敗を叱責されるよりも、改善の機会として受け止められる文化をつくることが重要です。前述したメンター制度のほか、週次ミーティングで意見交換の場を設ける、LINEやチャットツールで気軽に質問できる仕組みを用意するなど、小さな工夫で大きな効果が得られます。
他社と差別化するための考え方
若手電気工事士の採用・定着は、どの会社も直面する大きな課題です。その中で「他社とどう違うのか」を明確に伝えられる企業こそ、求職者から選ばれます。ここでは、差別化につながる3つの視点を紹介します。求人原稿作成の際などにお役立てください。
他社にない独自の評価ルール
他社との差別化には、自社独自の評価ルールを設定し、公開することが効果的です。たとえば、安全意識・協調性・資格取得努力などを評価項目に加えれば、「成果だけでなく人間性も見てくれる会社」として差別化できます。
成長支援のステップを具体化
「資格取得を支援します」と言うだけでは、求職者な成長イメージを持てず、差別化にも繋がりにくいです。具体的な成長ステップを示すことで、若手が「ここなら成長できる」と実感できます。
(例): 1年目=基礎研修+第二種電気工事士取得 3年目=小規模現場のリーダー経験 5年目=第一種電気工事士取得+施工管理業務
このようなキャリアロードマップを示した上で、自社ならではの成長プロセスを入れることで、差別化された人材育成企業としてアピールできます。
定着率を数値で見せるブランディング
実際に定着率が高い会社であったとしても、「定着率が高いです」と表現するだけでは説得力がありません。定着率については、数字で記載することが重要です。
(例): 「直近3年間の離職率ゼロ」「新卒入社5年定着率80%」「資格取得率90%」
これらの数値を採用ページや求人票に掲載することで、求職者に「安心して働ける会社」と認識され、ブランド価値が高まります。
よくある質問
ここでは、若手電気工事士の評価制度・成長支援制度づくりについて、よくある質問をまとめています。
Q.若手社員が辞める一番の理由は?
A.最も多いのは「成長実感が得られないこと」です。給与や待遇よりも「キャリアが見えない」「評価が曖昧」などが離職に直結します。
Q.入社してからどれくらいで辞める人が多い?
A.厚労省の調査(※)でも、入社後3年以内の離職率は高く、電気工事業界も同様に「定着しにくい時期」があります。 (※)出典 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」
Q.電気工事士の評価制度はどう作ればいい?
A.スキルチェックリストや資格取得状況を基準に取り入れると、納得感のある制度になりやすいです。
Q.若手が不満を感じにくい評価方法は?
A.成果だけでなく「安全意識」「協調性」「資格取得への努力」も評価対象に含めることが効果的です。
Q.定着率を数値で示すと効果はある?
A.客観的な証拠になるため、信頼感が増し採用力が向上します。
Q.どんな数値を出せば差別化になる?
A.「離職率」「資格取得率」「勤続年数平均」などが有効です。
若手電気工事士が辞めない会社づくりの3本柱と継続的な改善の重要性
ここまで解説したように、若手電気工事士が辞めない会社づくりには、公平な評価制度・成長を支える仕組み・働きやすい職場環境という3本柱が欠かせません。
評価の透明性を高め、資格取得やキャリアパスを明示し、さらに安全で相談しやすい現場を整えることで、若手が安心して働き続けられる基盤ができます。
これらを一度整えるだけでなく、現場の声を反映しながら継続的に改善していくことで、定着率の向上と企業の成長を同時に実現できるでしょう。
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